バウンディン(By Pixer)
人生に変化はつきもの。これは、モンタナ州の山の上に住んでいる子羊と仲間たちのお話です。
深緑色のヨモギがしげる草原の遊び場に、フサフサの毛をまとった一匹の子羊がいました。きれいな純白の毛が自慢で、太陽が出ると嬉しくて、陽気なウエスタンワルツに乗って、ついついステップを踏んで踊り始めます。
「ツータカタッタ、タッタッタ。みんな、踊ろうよ」
子羊につられて、プレーリードッグ、ふくろう、ガラガラヘビ、ガーグルなど、草原の川向こうの仲間たちも、一緒に踊ります。
「カーカタカッタ、ホーホホホっホ、ガーガラガッタ、ジャーブジャブ」
ところが、良いことばかりは続きません。ある日、ほろ馬車に乗ったカウボーイが子羊を捕まえました。荷台に乗せられて、あっという間に、自慢のキラキラ輝く純白の毛が刈られてしまいました。ひと抱えもある羊毛は町の市場に出されました。子羊は、つんつるてんになって、ヨモギの草原に放り出されました。
子羊は大事な純白の毛皮を取り上げられて、踊る気力もなくなり、しょんぼりしていました。子羊の気持ちに呼応するように、突然、雲行きが怪しくなり、ピンクの地肌に冷たい雨が容赦無く打ちつけます。今まで一緒に踊っていた仲間たち、もすみかに戻ってしまいました。
「ピンクのへんてこやろう。イーヒッヒ、へんなかっこうだな」雨音がこんな声に聞こえてきました。
そこへ跳ねながら登場してきたのが、立派な角を持った賢者の中の賢者、アメリカンジャケロープ。
「へい、坊や、何を落ち込んでいるんだい?」
子羊は、今までのことを話しました。
「ピンク、ピンク?ピンクがどうした。ピンク色がそんなに悪いのか、体が何色かってことが、どれだけ大事なことなんだ。ピンク、ムラサキ、アカムラサキだったらどう?それが何だって言うんだ」
「でも、みんな、僕の姿を見て笑うんだよ」
「笑われたって良いじゃないか。人生には、良いときも悪いときもある。落ち込んでいるときは、自分のまわりをよく見るんだ。毛を刈られたって、体は元気なんだろう。足だって、ほら、大丈夫だ。モノの見方さえキチッとしていれば君は完璧だ」
「そんなこと言ったって、どうすれば良いのさ」
「簡単なことさ。さあ、得意な踊りを、もう一度踊るんだ。足を思い切って振り上げて、元気よく下ろす。そう、その調子だ。力いっぱいジャンプすれば空にまで届いちゃうよ。ほら、〜バン、バン、バルディバン。バウンドすれば空は、すぐそばだ、君なら出来る、やってみよう!」
「体を動かしていたら、僕にもできる気がしてきたよ。そうだね、もう一度、やってみるよ」
子羊は元気を取り戻し踊りだしました。
「バン、バン、バルディバン」
すみかに隠れていた川向こうの仲間たちも出てきて一緒に踊りだしました。
そうして、子羊の毛が生えそろう毎年5月になると、カウボーイに毛を刈られて丸裸になるのですが、子羊はそれ以来、落ち込むことはなくなりました。仲間たちも、みんなで一年中楽しく踊りつづけました。
世の中、アップアンドダウン、良いときばかりじゃない。でも、ジャケロープみたいなのがいれば最高さ。
◆ ◆ ◆
体は元気で身の回りのことだってちゃんと出来てる、それだけでも恵まれてるよね。お金がそんなにあるわけじゃないけど、疲れていても美味しいご飯を食べて、ぐっすり眠れば、また、朝になればやる気がで出てくる。いろんなことがあるけど、前を向いて足元を見てゆっくり歩いていけば、人生はじゅうぶんに幸せだ。モノごとって、見方一つで、どうにでも変わるものなんだ。グッドラック。
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