2020年12月17日木曜日

中川一政 もう一度生まれたら

 もう一度生まれたら(中川一政)

私ははじめて生まれてきた。
だから、どう生きたらよいかわからずに這い出した。
どこへ行ってもぶつかる。
ぶつかって間誤ついた。
今度生まれたら、もっと卑屈にならずに堂々と歩けるだろうし、
無駄もしないだろうと思う。
しかし、それはわからない。
矢張りまごついたり、いじけたり、物にぶつかって歩いてゆくのが、
人間というものかと思う。

寅さん「男はつらいよ」主題歌

 寅さん「男はつらいよ」主題歌

歌:渥美清
作詞:星野哲郎
作曲:山本直純

(私(わたくし) 生まれも育ちも 葛飾柴又(かつしかしばまた)です
帝釈天(たいしゃくてん)で うぶ湯を使い 姓は車 名は寅次郎)

(人呼んで フーテンの寅と 発します)

俺がいたんじゃ お嫁にゃ行けぬ
わかっちゃいるんだ 妹よ

いつかおまえの よろこぶような
偉い兄貴に なりたくて

奮闘努力(ふんとうどりょく)の 甲斐も無く
今日も涙の

今日も涙の 日が落ちる
日が落ちる

ドブに落ちても 根のある奴は
いつかは 蓮(はちす)の花と咲く

意地は張っても 心の中じゃ
泣いているんだ 兄さんは

目方(めかた)で男が 売れるなら
こんな苦労も

こんな苦労も かけまいに
かけまいに

男とゆうもの つらいもの
顔で笑って

顔で笑って 腹で泣く
腹で泣く

(とかく 西に行きましても 東に行きましても
土地 土地の お兄貴(あにい)さん お姐(あねえ)さんに
ごやっかい かけがちなる 若造(わかぞう)です)

(以後 見苦しき面体(めんてい) お見知りおかれまして
向後万端(きょうこうばんたん) ひきたって
よろしく おたの申します)
https://www.youtube.com/watch?v=qjd-4rrX1K8

■Vol.14星野哲郎(作詞家)                    1999年7月15日(木)
1925年9月30日生まれ山口県
 渥美清さんを追悼し 映画『男はつらいよ』がテレビに続き、映画館でも上映されている。オープニングで、あのメロディーに乗って、渥美さんの歌声が流れると、ファンは切々と伝わる寅さんの心情に涙する。作詞を担当した星野哲郎さん(70)=写真=は、40年にわたって4000曲の演歌を作詞した大御所だが、これだけ息の長い歌は珍しいという。映画とは別の、もうひとつの『男はつらいよ』物語。
 星野さんが、当時フジテレビプロデューサーの小林俊一氏から依頼を受けて、テレビドラマ「男はつらいよ」主題歌を作詞したのは昭和43年のこと。急いで書いてくれ、といわれ、ドラマの粗筋を基に4、5日で書いた。当時はファクスもないから、速達で送った。受け取 ったという返事だけで、何の注文もなかったから、テレビから渥美さんの歌声を聴くま で、本当に使われるのかな、と思ったくらいです」 星野さんが当時イメージした「寅さん」は、「けんかっ早くて、一生懸命。でも、やるこ となすことうまくいかない。いわば大変な人」というもの。それに加え、妹さくらへの甘 い夢を重ね、素直に表した。
 「2番に、♪目方で男が売れるなら、というのがあるけど、あれは当時、渥美さんが、 大きな人というイメージがあったからなんです。けんかも強いという印象もありました」作曲は山本直純氏が担当した。「やさしいメロディーで、クラシックの人がうまく演歌 を書いたって思いました。渥美さんの歌も、本職の歌手には出せない味わいがあっ て、仕上がりはよかったですね」 ドラマは好評のうちに終了。翌44年、松竹で映画化されたが、主題歌が日本クラウンからレコードとして発売されたのは同45年2月だった。
 「録音の立ち会い、打ち合わせで、十数回は渥美さんと会ったけれど、古風なくらい おとなしい人だった。ただ、(同じコメディアン出身の)坂上二郎さんの歌みたいにヒット しますかね、と話していたのを覚えている。そんなこと関係ないよ、と言ったんだけど、 売れたいと思っていたんでしょうか。渥美さんの歌は日常会話のように、スーッと入っ て、聴く人を疲れさせない。自然で素直な発声でした」 水前寺清子の「365歩のマーチ」、都はるみの「アンコ椿は恋の花」、北島三郎の「函 館の女」、小林旭の「昔の名前で出ています」などなど、星野さんの手になったヒット曲 は数多い。
 これまで「人生の応援歌」を書き続けてきた星野さんだが、特に「男はつらいよ」の♪ 奮斗努力の甲斐もなく--、のフレーズが好きだという。
「ガンバレ、ガンバレじゃないんです。一生懸命にやっても、うまくいかない。そのちぐ はぐさに寅さんの人生がある。そこが、聴く人ごとの人生と一緒に走ってくれる応援歌になるんです」「男はつらいよ」はこれまでにシングルで38万枚が売れているが、決して大ヒットで はない。 しかし、星野さんは、こう話す。
「セールスという数では一番ではないけれど、映画の主題歌としては世界に例のない長寿になった。その点では、私にとってはピカイチの作品です」